心に生きる言葉

カウンセラーの辻原です
あじさいの美しい季節となりましたね

 

10日ほど前、作家の田辺聖子さんが亡くなりました。
私にとって、特別な思い出のある人でした。

 

彼女の小説やエッセイにどれほど笑い涙し、古典小説に心ふるわせたことでしょう。

結婚してしばらくたったころ、海外に住むことになり、妊娠を希望していたので職を探すこともなく時間を持て余し寂しかった私は、彼女の小説にずいぶんと支えられました。

 

帰国してからのこと、めったに講演などしない田辺さんが宇治文化センターで講演をすることを当日の新聞で知った私は、取るものも取りあえず彼女の著書の一冊を持って宇治へと車を飛ばしました。

講演後におそるおそる楽屋を訪ね著書にサインをお願いすると、予告なしの闖入者である私に対して田辺さんも周囲の人々もやさしく、こころよく招き入れ筆ペンで丁寧にサインをしてくださいました。

外国暮らしの寂しさをあなたの本に救われました、と話をすると、「まぁ、それはよかった」とあの少女のような声で言いニッコリしてくださったのを思い出します。
(今考えると、よくもずうずうしく行ったものだと我ながら苦笑)

 

住所の書かれた名刺をくださったので後日お礼状を出すと、季節の花を水彩で描いた絵手紙を返してくださり、それは今も私の宝物となっています。

 

田辺さんが小説の中に書いた言葉で私が日々心にとめているもの・・・

『明日の風は、明日吹く』

 

これは、よく使われる「明日は明日の風が吹く」と似ているようで、全く違いますね。

 

思い浮かべるとふと、心が軽くなるようなこの言葉を、これからも大切にしていこうと思います。