不妊症の定義

2年間夫婦生活を営んでいても、妊娠しない夫婦を不妊症と言います。100組夫婦がいると、 最初の1年目で80組の夫婦が妊娠し、次の1年で10組の夫婦が妊娠します。つまり残る10組(10%)の 夫婦が不妊症ということになります。しかし、女性の結婚年齢が高くなったことなどにより、不妊症は10%よりも増加してきています。

最近では1年間妊娠を希望しても、妊娠しない夫婦を、不妊症と定義するようになってきました。

WHO(世界保健機関)による、不妊症の7273カップルの調査によると、不妊症の原因は41%が女性のみ、24%が男女ともにあり、24%が男性のみ、11%が原因不明です。つまり男性に原因のあるカップルが約4組に1組、男女ともに不妊症の原因があるカップルが約4組に1組もありますので、不妊症の検査は夫婦ともに受けることが原則と言えます。

不妊症の原因

不妊症の原因は、大きく分けると次のように大別されます。

頸管因子によるもの

精子の通り道である子宮の頸管部分が、炎症や頚管ポリープなどにより異常に狭くなったり曲がって通過しにくい状態であったり、頸管から分泌される粘液の量が少なかったりすると子宮の奥に進めなくなり不妊症になります。

男性因子によるもの

男性因子とは、精液量が少ない場合や精子数が少ない場合、あるいは精子の運動率が悪い場合や奇形精子の割合が多い場合などがあります。また、精子の数が多くても機能(精子の細胞膜や先体酵素)が異常な場合にも不妊症になります。

子宮因子によるもの

子宮の形が異常な場合(子宮奇形)や子宮筋腫(特に粘膜下筋腫)が存在する場合、あるいは子宮内膜ポリープや子宮内腔の癒着(複数回の中絶手術やクラミジア感染)がある場合には妊娠しにくくなるといわれています。

但し、子宮筋腫や子宮内膜ポリープがあると必ず不妊症になるというわけではなく、その存在する場所や大きさによっては、妊娠が可能な場合があります。 さらに、子宮内膜の機能異常(黄体ホルモンに対する子宮内膜の反応性が悪い場合など)によっても不妊症となります。

受精障害によるもの

受精障害は、精子側に問題がある場合と卵子側に問題がある場合とが存在します。
体外受精法や顕微授精法を実施することにより、これらの障害が診断できるようになりました。

免疫異常によるもの

頸管粘液の中に、精子を動かなくしたり精子を凝集させてしまうような抗精子抗体と呼ばれる抗体が存在する場合には、射精された精子が子宮内を進めなくなり、結果として卵子と受精できなくなり不妊症となります。

子宮内膜症によるもの

子宮内膜症とは、この内膜細胞が本来の子宮内腔ではなく、骨盤の腹膜や卵巣などの中に入り込んでおこる病気のことをいいます。子宮内膜症があると月経痛がひどくなったり、性交時痛、排便痛などが起こります。
子宮内膜症が子宮筋層内にできた場合を子宮腺筋症といい、卵巣にできた場合をチョコレート嚢腫といい、チョコレート嚢腫の症状がひどくなると、正常な卵巣組織が少なくなって排卵が起こらなくなったり、黄体化未破裂卵胞症候群が起きたりします。

性機能性障害によるもの

経膣超音波の特徴は、子宮・卵巣の情報が詳細かつ簡便にわかります。
女性の性機能障害には、精神的なものと解剖学的に問題のある場合があります。 男性の性機能障害には、勃起障害、射精障害と造精障害があります。

卵管因子によるもの

卵管が、膣から侵入したクラミジアなどに感染し卵管が詰まったり、細くなったり、癒着したりして精子と卵子が会えなくなったり、子宮内膜症によって、卵管が癒着を起こし不妊症になる場合や、卵管留水腫がある場合にも不妊症になります。
その他、卵管采の機能異常(ピックアップ障害)によっても不妊症になります。

内分泌因子によるもの

・40歳前後に閉経がきてしまう早期卵巣機能不全の場合、不妊症になります。

・下垂体から分泌されるホルモンで、プロラクチンと呼ばれるホルモンが高値となる高プロラクチン血症になると男女ともに不妊症の原因となります。

・甲状腺疾患により、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが減少すると無排卵になり、不妊症の原因となります。

・脳にある視床下部と下垂体と呼ばれる器官からのホルモン分泌によって排卵がコントロール(規則正しい月経と排卵のしくみの項参照)されていますが、このどちらの機能が障害されても無排卵となり不妊症となります。

・卵巣に小さな卵胞がネックレス状に多数認められる多膿胞性卵巣症候群では、成熟卵胞が発育せず排卵出来なくなり、月経異常を起こして不妊症となります。

・体重が不妊症の原因になる場合もあります。肥満による排卵障害として前述の多膿胞性卵巣症候群があります。  体重減少性の排卵障害としては、過度なダイエットやストレスなどがあります。ダイエットすることが、体にとってストレスとなりホルモンのバランスが崩れて排卵障害に陥るのです。

・成熟した卵胞が破裂しないでそのまま黄体化してしまう黄体化未破裂卵胞症候群では、基礎体温表も2相性になりきちんと排卵したように見えますが、実際には排卵が起こっていない状態で、毎周期にこの症状がある場合には、不妊症になります。