不妊症の検査

kennsa

妊娠成立までの過程と検査

妊娠成立までの過程 主な検査
卵胞発育 基礎体温 / 経膣超音波検査 / 血中ホルモン検査
排卵と射精 基礎体温 / 超音波検査 / 頚管粘液検査
精液検査 / 性交後試験(ヒューナーテスト)排卵検査キット
卵管采での卵捕獲 クラミジア感染症検査 / 子宮卵管造影検査 / 腹腔鏡検査
受精と胚発育 ※体外受精 – 胚培養
胚の卵管内輸送 子宮卵管造影検査 / 卵管鏡検査 / 腹腔鏡検査
子宮内膜着床の成立 血中ホルモン検査 / 子宮内膜組織検査 / 経膣超音波下通水検査(ソノヒステログラフィー) / 子宮鏡検査 / 免疫検査

検査の説明

01.基礎体温表

基礎体温表はなるべく当院で使用しているものをお使いください。以前から記録されている方は、出来れば最近の2カ月分を書き移してください。

日付欄は、あらかじめ1カ月先まで記入しておかれると便利です。(次の来院予定、検査予定のため)備考欄には細かく記載する必要はなく、顕著な症状があった時に記載する程度でよいです。

体温測定時の一般的注意として、4時間以上の睡眠がとれていること(毎日の起床時間がずれてもかまいません)、専用の婦人体温計を使用すること、起床時すぐに舌下計測すること(話をしない、食事をしない、トイレに行かない)などです。 基礎体温表は、毎回来院時に持参して下さい。担当の医師が、検査予定・検査結果・治療内容などを記載するのに利用し、タイミング指導の説明などにも役立てます。

02.経膣超音波検査

初診時はほとんどの方に、内診時に行います。 経膣超音波の特徴は、子宮・卵巣の情報が詳細かつ簡便にわかります。

子宮・卵巣の形態的な異常(子宮筋腫、卵巣腫瘍など)の有無は、不妊治療を始める上では内診検査とともにかかせない検査です。また、特に排卵直前には、卵胞(卵巣内に存在する卵を内包している袋)の計測が可能で、排卵時期をほぼ正確に予測できます。また、妊娠成立の最初の現象である着床をうまく起こしてくれるかどうか、子宮内膜を形態的に判断する事が可能です。

さらに、排卵が起こったかどうかも、卵巣の形態的変化をみることで的確に診断できます。

03.血中ホルモン検査

A 下垂体ホルモン(黄体化ホルモン/LH・卵胞刺激ホルモン/FSH・乳汁分泌ホルモン/PRL) 月経周期の2日目から5日目にかけて脳下垂体からでるホルモン分泌が正常に保たれているか、また、そのバランスがとれているかを検査します。なるべく午前中に来ていただき、もともと分泌している下垂体ホルモン値を測定するために採血します。特に卵胞刺激ホルモンは、どの程度いい卵子ができるかという卵巣予備能の評価として重要になります。

B 排卵後の卵巣黄体機能検査 月経周期21日目頃あるいは、排卵後6~7日目頃に血液中の黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵巣ホルモン(エストラジオール)を測定します。この時期は卵管内で受精した卵が、子宮内膜に戻ってきて、着床する時期にほぼ一致します。この時期の2つのホルモン分泌が、着床現象をうまく行うために非常に重要であるという根拠に基づいた検査です。結果が不良な場合は、その周期は排卵現象がうまく行えていなかった可能性があり、排卵がうまくおこった周期に再度検査をすることもあります。

C その他のホルモン検査 その他、排卵機能に影響を与えるホルモンとして、甲状腺ホルモン・男性ホルモンがあります。最近は抗ミュラー管ホルモンを測定することで卵巣年齢を評価できるようになりました。 以上の結果を詳細に検討して治療方針に役立てていきます。

04.精液検査

現在、男性不妊は不妊原因の約55%と高い確率で占めています。そのため、不妊治療を行う上ではかかせない検査となります。この検査は、男性不妊症に対して産婦人科外来でできる唯一の検査で、必ず全員に行っています。 4~5日程度の禁欲期間後、マスターベーションで射精してもらい、約2時間以内に検査します。当クリニックでは、採精用の専用容器をお渡しして自宅でとってもらうか、クリニック内の専用個室でとってもらうか選んでいただけます。

検査内容は、射精量・1ml当たりの精子数・運動率(%)・奇形率(%)・運動性です。検査結果が不良な場合は、再検査となる場合があります。 再検査でも不良の場合は、当クリニック泌尿器科男性不妊外来へ紹介することもあります。

05.性交後試験(ヒューナーテスト)

検査は、原則的には4~5日の禁欲後、検査前夜か当日の朝に夫婦生活を行い、外来を受診します。
少量の頚管粘液を採取し、頚管粘液と膣内の精子の存在・精子の運動状況を顕微鏡下に判定します。
検査の結果がよくない場合は、抗精子抗体の検査を行い人工授精の適応となる場合もあります。

06.クラミジア感染症の検査

検査はおもに血液検査で行います。 検査で陽性が判明した場合、ご夫婦ともに抗生物質の内服をしてもらいます。 原因不明の不妊カップルは、全体の約20%を占めると言われており、その中でも潜伏期間が数年に及ぶクラミジア感染の罹患頻度はかなり高いものと思われます。

クラミジア感染はほとんど無症状で、長期的に進行し、骨盤腔内に蜘蛛の巣が張ったような癒着状態になる場合があります。このような状態になると、排卵した卵もうまく卵管内に取り込まれなくなり、卵管自体の機能も低下することになります。 最近では、クラミジア感染による癒着と子宮外妊娠が深いかかわりがあるという報告もあります。

一度起こってしまった癒着は、抗生物質の内服では消失しないため、抗体価が異常に高い場合は、早めに子宮卵管造影検査や腹腔鏡検査を必要とする場合があります。

07.子宮卵管造影検査

不妊症の原因として、卵管因子の不妊症はかなりの率(約20~30%)を占めるとされています。そのため、ほとんどの患者様になるべく早い時期に行っています。妊娠の既往がある方でも、前回の妊娠から3年以上の期間がたっていれば、続発性不妊症と考えて実施したほうがよいと思われます。 検査は予約制です。月経終了後約2日~5日に行います。検査前の採血で感染症の有無を確認してから行います。

レントゲン検査ですのでレントゲン室で行い、レントゲン写真を2枚(造影剤注入時と、注入後数分)撮り、所要時間は約30分を要します。卵管を造影剤が通過するときに多少の痛みがあります。検査前に痛み止めの座薬を処方しています。 帰宅後に膣内タンポンを抜去してもらい、処方された抗生物質を内服します。検査当日の入浴は控えて、シャワーだけにして下さい。

タンポン抜去後も出血を認めることがありますが、2~3日でおさまれば、特に心配はいりません。 この検査を実施した後に、卵管内の軽度の癒着が剥がれて、通過性が回復する場合があります。よって、この検査実施後は妊娠しやすくなるという報告もあります。

08.腹腔鏡(ラパロスコープ)検査

一定期間外来で治療しても妊娠に至らない場合や、いままでの検査で、妊娠するのに妨げとなる子宮筋腫や、卵巣腫瘍、卵管周囲の癒着などを疑う場合検査・治療の対象となります。

当クリニックでは自然妊娠を追及されるご夫婦には積極的にお勧めしています。全身麻酔下にお臍の下から3~5mmの細い内視鏡を腹腔内に挿入しておこないます。

検査だけなら数日の入院ですが、手術になった場合は約1週間の入院期間が必要です。

09.経膣超音波下通水検査(ソノヒステログラフィー)

子宮腔内に小さなバルーンカテーテルを留置し、そこから生理食塩水を注入し、着床の場である子宮内膜の状態をより詳細に描出する超音波検査です。外来診察で簡便に実施できます。

特に、粘膜下筋腫や内膜ポリープなどは、その存在場所まで判明し治療の可否が検討できます。検査時期は子宮卵管造影検査と同じです。

10.子宮鏡(ヒステロスコピー)検査

超音波検査などで、子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫などが疑われた場合、繰り返しの体外受精胚移植でも妊娠に至らない場合などに行います。

細いファイバースコープを子宮口から子宮内腔に挿入して観察します。通常麻酔などは特におこなわずモニターを見ながら説明してゆきます。日帰り検査です。

11.免疫的検査

初期流産を2回以上続けて起こした場合を習慣性流産あるいは不育症と呼びます。流産の原因は様々で、不明な部分の方が多いと考えられますが、最近では各種自己抗体やNK活性を検査することで着床不全や流産の原因が一部判明することが解ってきました。

明らかな異常値が認められた場合、改善できるケースもあります。

※体外受精 – 胚培養
受精と胚発育に関しては、一般外来での検査ではわかりません。高度生殖医療である体外受精~胚培養を行って初めて、卵子の質や、受精状況がわかることがしばしばあります。

37歳くらいより卵子になる細胞は急激に減り、かつ染色体異常を起こしやすくなってきます。その意味でも正確な検査と一般治療を一定期間行って妊娠できない場合は、卵子の質や受精障害に問題がある場合があり体外受精が有効な検査・治療となります。